一年の中で、時という矢の速さにふっと気づいてしまう、2回の時期があります。それは、4月と12月です。4月は、まだまだ一年の頭とも言えるでしょうが、もう3分の1も経ってしまったのかと、覚悟に溢れていた新年の自分に限りなく申し訳なくなったり、何一つ変わっていないのに、学年だけが上がっているということに情けなさを感じてしまったりするものです。その中でも、気づいていないうちに、僕は部の中で最年長になってしまいました。入部当初までは、自分より年上の先輩たちがいっぱいいらっしゃったはずなのですが、もう先輩より年上という変な上下関係の中で暮らすようになりました。また、中年男性のようになってしまった腹を見下ろして、時間の遣る瀬無さを(まだ22歳です)体験しております。
しかし、僕は、最年長ながらも、部の中で最も柔道歴が短く、とにかく弱いです。また、日本語ネイティブでもなく、自分の言いたいことの、ほんの一部しか出せないのです。柔道部において何の頼りにもならない最年長なのです。もちろん、それに伴う、何等かの責任感を感じているわけではありませんが、少なくとも、この部員日誌を通じて、皆に自分が思っていることが、少しでも伝わったらいいなと思っているだけです。
ということで、今日は、最近藤井風の音楽を聞いて思ったことを、いろいろ話してみたいと思います。まず、僕が最初に風さんの曲を聞いたのは、2年前です。僕は音楽を聞く時、サウンドに一番焦点をおくのですが、風さんの音楽はすごくサウンドがよくて、特に、きらりと青春病という曲にハマっておりました。その時は、曲の歌詞などは見もしなかったので、たまにコメントに、「日本語話者で、本当によかった。」などと書いてあるのを見ると、理解できなかったのです。
半年が経ちまして、寮に新入生たちが入寮しました。本吉、山中、林、真田、、、、その中で、山中くんと藤井風の話をして、「旅路」という曲をおすすめされました。僕は、何か、おすすめされたら、ちゃんと聞かないと!と思ってしまって、なかなか聞いてみようという気持ちにならないのです。その日からまた一年が経った最近、僕は完全に「旅路」という曲にドハマってしまいました。
僕は、塾柔道部に入るまで、色んな組織に身をおいて、去ってを繰り返してきました。そこで、誰かに愛されたり、嫌われたり、誰かを好きになったり、憎んだり、色んな感情の飛び交う空間の中で、時間を流してきました。その混沌の中で、僕も色々悩んだり、怒ったり、落ち込んだり、涙を流して、やっと体得、、というか慣れてきたのかなと思っていたことですが、それが「旅路」という曲に、驚くほど綺麗にまとめられておりました。
「果てしないと思えても
いつか終わりが来ると
知らなかった
昨日までより
優しくなれる気がした
僕らはまだ先の長い旅の中で
誰かを愛したり 忘れたり
色々あるけど
いつの間にかこの日さえも懐かしんで
全てを笑うだろう
全てを愛すだろう」
いつものように、「旅路」をただ、流しておいて、別のことをしていたのですが、一瞬「全てを愛すだろう」と聞こえて、びっくとしました。それで、やっと歌詞を最初から最後まで読むようになったわけです。
小学生の時、中学生の時、高校の時、軍隊の時、色んなところでバイトしていた時、柔道部にいる今、振り返ってみると、本当に嬉しいことも、楽しいことも、幸せなことも沢山あったのですが、やっぱりつらいことも、不幸なことも、嫌な人もいたわけです。それでも、それらの記憶は、すべて、良かろうが悪かろうが、何か考えるだけでも胸が詰まってきますよね。どんなに幸せでも、どんなにつらくても、いつか終わりは来てしまうでしょう。そのようでしたら、ずっとつらいままにいるなんて、人生勿体ないなと思ってしまいます。嫌いな人さえ、いつか別れて、一生会えなくなると思えば、怒っても無駄だなって思ってしまうのです。
皆が大切な人で、極めて低い確率で縁を結び、それがいつか終わってしまうだろうと思えば、嫌がらせなんかやりたくない。嫌がらせをしてくるやつがいるとしても、いつか終わるだろう?どうせこの時も、いつか懐かしくなって、笑い飛ばして、思い出になってくるだろうと、優しい心になれます。
この「旅路」を聞いて、もう一回反省する一週間になりました。皆さんもぜひ、聞いてみてください!!