御無沙汰しております、呉銅敏です。最近、昼はすごく暖かいのですが、夜には顔が痛くなるほど寒くなり、薄着で出かけたのを後悔しております。今日の部員日誌ですが、何を書こうと悩みすぎて、何も浮かばず、いつもの空想のようなものを書いてみたいと思いました笑

自習室でぼーっとしていた時の空想です。

まずはこの文章からでした。

猿は眠っていた。  

 

、、、、、

昼下がりの光が木の葉の隙間から差し込み、六月の風が静かに頬を撫でる。夢うつつの彼を揺らしたのは、木漏れ日の戯れか、それとも気まぐれな風か。

鳥のさえずりが聞こえてくる平和な6月の昼に、猿は、なにかを恐れている。おかあさん猿も、おとおさん猿も、おともだち猿もいない。みんなどこぉー?初めてのことでもない。多分狩りに行っているか、どこかに隠れてオレを驚かせようとしているだろー?もういいよ、そういうの。出てきて。

 ここは鬱蒼たるジャングル。

 猿は、恐怖を忘れようと、木に背をもたれ、余裕ぶりながらジャングルを見下ろす。オレは猿だぜ。怖いトラさえオレのところまでは届かん。舌鼓を打ちながら帰っていくしかできないんだ。猿の自慢は鼻につくぐらい嫌だけど、悪口はやめておこう。逆にそれが、可哀想に見えてきたんだ。

 猿は二度寝をしていた。猿は夢をみていた。でっかい大王猿になって、崖の端っこに立ち、広大なジャングルを君臨する夢を。バナナ葉っぱで作った椅子に座って、小猿たちが剥いてくれるバナナを食べながら、余裕を満喫していた。目を閉じて太陽の光を感じていると、横から小猿が、はい、バナナですよ、と言いながらバナナを渡した。大王猿(小猿だけど)が、ありがとうと、微笑みながらバナナを手に取って口に運んだが、手を滑らせてバナナが落ちてしまった。落ちたバナナは、ぐるぐるとどこまでも転がって行った。あら、もったいない。大王猿は転がっていくバナナを追っかけて走った。木にぶつかっても、磐にぶつかっても、バナナは止まることなく進んでいった。水に沈んでも、沼に入ってもバナナはどこかへぴょんぴょん飛んでいった。雨が降っても、雪が降っても、季節が巡っても、年月がどれだけ流れても、大王猿はバナナを掴むことができなかった。それでも大王猿は、諦めずにずっといつまでもそのバナナを追っかけて走った。

 ある日、大王猿は相変わらずバナナを追いかけていた。晴天の昼、もうジャングルとは言えない、草原のようなところまで至ってしまった。猿はもはや無念夢想。バナナについていくことしか考えられなくなってしまった。バナナは弾み、飛び、走り、そして止まった。止まった??そうだ。バナナはある崖の端まで追い込まれ、そのまま止まった。猿は、バナナを追い込むのに成功したと思い、嬉しそうな顔を浮かべて、バナナを掴もようとした。

 その時、バナナは崖の向こうを眺めながら喋りかけてきた。ほら、小猿よ。ここが世界の果てだ。猿は聞かない。ただ、そろりそろりと足を運ぶだけだった。バナナはそのような小猿の愚かさをものともせず、話を続けていった。見ろ。夕日が沈んでいるじゃないか。すばらしい。

一歩一歩、気づかれないように。

     可哀想な小猿よ。夕日が沈んでいるのに、未だに目の前の欲望にとらわれているのかい?雨に降られ、沼に陥り、虎に食われそうになってまで、気づいていないのか。俺は、たかがバナナなのだ。もう日が沈んだら、二度と出てこないかもしれない。それでもいいのか?ほら!もう暗くなっているじゃないか!

 猿は両手を広げてじりじりと間合いを詰めていた。一瞬で捕まえるぞ。よし、、後少しで飛ぶぞ、、、せーのっ!捕まえっ

 バナナを捕まえたと思った瞬間、猿は目を覚めてしまった。

 彼はまだジャングルの中、木にもたれたまま寝ていたのだ。風は悲鳴を上げ、漆黒のような暗闇が体を押し付けるようだった。カァーカァー。見知らぬ黒い鳥が目の前で鳴いていた。猿は警戒して、もっと上に登ろうとしたが、あの鳥は首が傾げては、後ろ向いてそのまま飛んで行った。登らずにすんだ小猿は、恐怖に勝てず、ひいひい泣きながら、空いてしまった腹を撫でていた。一体皆どこにいってしまっただろうか。 

 猿はついているのかもしれない。地面に落ちている一房のバナナを見つけた。猿は地面におりてバナナのある所に走った。どうしてこんなところに一房のバナナが落ちているのかは分からないけど、猿は喜んでバナナの皮をむいて口の中に入れようとしたが、急にきしきしと何かが開けられるような音が聞こえてきた。猿が驚いて振り返ってみると、そこからニンゲンが大勢やって来ているのが見えてきた。ジャングルの木をむやみに伐っているニンゲンを見たことがある小猿は、ニンゲンを怖がっていた。猿は食べようとしていたバナナをそのまま両手に持って、木に戻ろうと走ったが、木の前にはもうニンゲンが立っていた。急いで後ろに逃げようとしたが、またニンゲンがいた。右も左も。そうだ。猿は包囲されてしまった。一体何匹いるんだ?

ニンゲンたちは包囲網を徐々に縮めた。猿は息が上がり、すぐにでも気絶しそうだった。もう目の前はニンゲンしか見えない。猿は左右を絶えず見ながら逃げ足になっていた。ニンゲンたちはお互い目を合わせて同時に頷いては、猿の方に網のようなものを投げた。小猿は反射的にそれを避けて、あるニンゲンの股の間をくぐり、またあるニンゲンの足から登って、肩を踏んで飛び逃げた。包囲網から完全に抜け出たのだ。そのまま猿はニンゲンのいない方へと、平地を走った。ある程度逃げたと思った猿は走りながら後ろを見てみるとニンゲンたちは少しも焦らずにゆっくりと付いてきていた。やめた方がいいさ。オレを捕まえるなんて無理だろう、と思いながら鼻で笑い、また前を向いた瞬間何かにぶつかってしまった。目に見えない何か。前にはなにもなかった。透明の壁?危ない、逃げないと。猿はすぐに立ち上がろうとしたが、衝撃が大きすぎてそのまま倒れてしまった。ぼやけた目には、走ってくるニンゲンの姿が映った。

二度と、夕暮れは見れなくなるのかな。

猿はすべてを諦めてそのまま気絶してしまった。

ここは「夢見ヶ崎動物園、新入りの猿の保護区域B-02」