失礼致します。甚だ僭越ながら自己紹介させていただきます。私、本年度慶應義塾體育會柔道部、並びに法学部政治学科1年の木下魁人(きのしたかいと)と申します。何卒よろしくお願い申し上げます。六月の末に遅れて入部させていただいたため、このようなタイミングでの自己紹介となってしまいました。
私の地元は神奈川県藤沢市。江の島の近くに住んでおり、歩けばすぐに海に出ることができる非常に心地よい場所です。休日には愛犬と海へ散歩に出かけたり、海辺をランニングするなど、日常から自然を感じつつ気分転換のできる環境で今まで過ごせてきたことをとても感謝しております。また、出身校は浅野高校。母校は中高一貫の男子校というとても特殊な環境です。また、スポーツ志向の学校ではなく、勉学重視の学校でございます。そのため、柔道が特別強いわけではなく、部員全員が中1から初心者で柔道を始めております。しかし、皆が文武両道という母校の精神を体現すべく日々努力しているとても素晴らしい環境です。ここで過ごすことができたことも本当に感謝しております。以上に述べた2つの要素は、現在の私の人格、基本的な思考方法を決定づけたとても大きな要素であり、私の人生においてかけがえのない宝物です。
以降、私の経歴について書かせていただきたいと思います。
私のスポーツ歴は3歳のころに遡ります。3歳でサッカーを始め、小学6年生までの10年間ほど励んでおりました。当時の私はサッカーをとても楽しんでおり、大好きでした。今でも一番好きなスポーツです。しかし、小学5年の夏から始めた中学受験勉強により一層勤しむため、所属していたサッカーチームを6年生の9月に休部しました。
その後、中学受験の結果、母校となる浅野中学校に入学いたしました。長かった受験が明けた私は早くサッカーがしたく、部活が始まるのを心待ちにしていました。そうです、私はサッカー部に入部しようとしていたのであります。しかし、体験入部が始まると、当時の同級生(後の柔道部同期かつ親友)に誘われ、付き合い程度の心持ちで柔道部に足を運びました。結果的に柔道の楽しさに魅せられ、その後の体験入部期間の全てを柔道部で過ごしたことをよく覚えております。また、一部の方はご存知かもしれませんが、浅野柔道部某顧問の先生。彼の笑顔で巧みに隠された強引な勧誘により、半ば強制的に入部を決意させられたという事実もございます。間違えました、「決意を助けていただいた」が正解ですね。こうした偶然の巡り合わせの結果として私の柔道人生は始まりました。
中高の柔道において特筆すべき戦績を収めることはほぼできませんでした。ただ、自分自身に負けないという基本的なところは6年間を通して貫き通すことができたのではないかと自負しております。そのお陰かはわかりませんが、高一では副部長、高二では部長を務めさせていただきました。部をまとめる立場として、様々なことを考慮し、声かけや指示の出し方に至るまでの一つ一つを工夫するという経験をできたことはとても貴重であったと思います。部を引退する際に、同期や後輩から多くのサプライズプレゼントと感謝の言葉をもらった時は今までで一番嬉しく、感無量で大泣きしてしまいました。自分の頑張りは絶対に周囲が認めてくれるという学びを得ることができました。
顧問の先生は近頃大変珍しい熱血漢の昭和気質でとても生徒思いの方です。自らの部員だけでなく、他の生徒をもご飯に連れていくなど、現代社会では絶滅危惧種のような特性を持っております。先生は柔道に限らない様々な物事、最たるものとしては、礼節、心配りなど人として欠くべからざるものを教えてくださいました。先生の口癖は、「今ここで学んだことが社会に出てから役に立つんだ」というものでした。社会を知らぬ中高生の身としては全く想像もつかない話でございましたが、今振り返ると先生は非常に貴重な学びを授けてくださり、感謝してもしきれません。顧問の先生は私が最も敬愛している方です。
また、手前味噌ではございますが、母校で受けた教育は全国的に見ても指折りのものであり、そこで得た様々な知見も相まって私は中高六年間で人として間違いなく成長することができました。
部活を引退した高3の6月以降は大学受験勉強に全集中し、一日の全てを勉強に費やす日々が続きました。特に夏休み期間はとても辛いものでした。朝から夜まで自習室に籠るわけですが、自習室に知り合いはいない上、学校もないため家族以外とはほぼ誰とも会話しない日々が50日ほど続いたからです。コロナの自粛期間を彷彿とさせますね。正直に言うと、この期間は病みかけていました。しかし、世間一般に「勝負の夏」といわれるように、この期間での学力の伸びはめざましいものでした。9月に入り、学校が再開すると同級生と勉強法を共有しあったり、何気ない会話をかわすことでお互いに助け合いながら過ごすことができ、その存在のありがたみをしみじみと感じることができました。模試の結果で競い合うなど、お互いに切磋琢磨したことはいい思い出です。受験を振り返ってみると、確かに辛かったですが、楽しく勉強に取り組めたと思います。受験を終え、いよいよ思春期の六年間を過ごした学舎に別れを告げる卒業の日はとても辛く、心に穴が開いた気がしたものです。
入部から二か月が経ち、徐々に慣れてきたものの、まだ依然として慣れぬ部分が多く残っております。また、実力の圧倒的な差も痛感しております。しかし、持ち前の我慢強さとポジティブさでめげずに何とか喰らいついて日々の練習に精進して参る所存でございます。
御精読ありがとうございました。
今後とも御指導御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。