こんにちは、ついに早慶戦前日を迎え、現役最後の日を噛み締めている主将の井口です。本日は日吉道場からお送りします。ついに引退日誌を書く時が来てしまいました。今の感情をひと言で表したいですが難しいです。本当に色々な想いが胸の中で渦巻いていますが引退日誌と聞いて一つ思い出されるものがあります。それは去年の今頃、進士凱一先輩が「バイト先にバケモンしかおらん」というタイトルの引退日誌を上げていたことです。僕はてっきり、引退日誌とは思わずいつも通りの日誌を上げてしまったのかと思っていましたが、先輩曰く本気で引退という節目に合わせて書いたらしいです。「この人、天才すぎる。」ただただそう思わされた出来事で、強烈に印象に残っています。自分の引退日誌を書きながら一年ぶりに読み返してしまいました。

最後の日誌をどんな内容にしようか前回の日誌を書いてから1ヶ月間考えてきました。後輩に伝えたいことは大方前々回書かせて頂いて、僕が慶應に入った経緯も何年か前に何度か書いた覚えがあります。そこで今回はベタではありますが1年生から今日まで印象的な出来事と共に振り返っていきたいと思います。濃い思い出がありすぎてとんでもなく長くなってしまう可能性がありますが是非是非最後まで読んでもらえたら嬉しいです。

1年生

1年生は柔道部がどういう組織なのか理解するのに費やしました。3年半この組織に在籍していますが、今の僕の体感では1年生の1年間で折り返しです。それほど濃くて初めて体験することが多い年でした。入学早々、1回目の幹部面談があり、杉村先輩に「お前、めっちゃ普通に練習やるじゃん、偉いね。」と褒められて動揺しました。入学する前から何故か普通に練習しない奴だと思われていたらしく、印象が良くなかった分、普通にやるだけで褒められて「なんかお得だな」なんて感じてました。その後色々あり入寮し、小野先輩と飯田先輩と超名門1号室で3人部屋生活が始まりました。この入寮が僕にとっては本当に柔道部の染まるいいキッカケで、今の自分の考え方は当時の4年生から最も大きく影響を受けています。みなさんぜひ入寮してください。細谷先輩と毎日ゴミ捨てをしたのもいい思い出です。寮生活など様々な初めての体験を通じ、やっと柔道部が理解できてきたと思ったのも束の間、早慶戦で4年生は引退を迎えました。同じチームとして柔道をしたのはたったの半年でしが本当に本当にかっこよかったですし、自分もこうなりたい!と強く思えました。2週間前ぐらいにゲリラで入道と竜生さんと廉也さんと朝まで呑み明かさせて頂きましたが1年生の頃見ていた「あの感じ」を思い出して大大大満足の大変楽しい神回でした。柔道は誰よりもストイックだけど、飲み会や行事では組織愛溢れる先輩方の背中は今でも僕のロールモデルです。

 

2年生

2年生は自分の柔道にフォーカスした年でした。ジュニアが最後ということもあり大幅に減量して出場し全く体が動かなかった事件をきっかけに増量してやろうと決意しました。特に夏休みの生活は人間ではなかったです。朝ご飯を食べて、練習して、全力で昼ごはんを食べ、寝て、トレーニングをして食べて寝て。途中で成人を迎え酒も加わりながら半年以上続けた結果、入学時より20kg増えました。「垢抜け」ではなく「垢入り」とマネージャーの先輩方に命名されてもなおデカくなることしか考えてなかったです。柔キチのあつきと出稽古もたくさん行き、何故か毎日が出稽古だった月もありましたね。あの時は本当にご迷惑おかけしました。日体、法政、國學院などなど武者修行期間を経て、個人戦よりもレギュラーに入ってチームに貢献したいと思ったのもこの頃でした。担当していたAO入試では初めて視察という形でコリー先輩と共に金鷲旗に参加させてもらい怒涛のスカウトスケジュールに挑みました。まさに「怒涛」でしたね(コリーさんに会いに福岡行きます)。全員の論文を合格させ、塾開こうかと思ったこともありました。おかげで3人のsfc柔道部を新たに受け入れられて康志郎の同期0人問題を解決できました。平山先輩が電撃入寮して下さり同部屋として1年間過色々な話ができて実はすごく楽しかったです。

 

3年生

人数が多くて個性大爆発な先輩方が率いたチームは「充実」の一言に尽きます。東京都学生では2部に落ち、全ての全国カテゴリーを逃してしまいました。この試合からようやく公式戦のレギュラーに入り、選手として戦うことの責任や覚悟を目の当たりにしました。たくさん泣いて、喧嘩して、しかしそれでも何度も這い上がりました。11月の2部大会、早慶戦は選手だけでなく全員の心が一つにまとまり、持てる全てを出し切りました。勝負の厳しさ、チームで戦う素晴らしさ、いい時も悪い時も進まなくてはならないことをこの1年間でよく学びました。海外遠征にも行きました。本当に楽しかったです。一生忘れられない思い出の一つです。今思えば、部員全員で2週間に海外に行く経験が11月の飛躍に繋がっています。アメリカで特殊なトレーニングや稽古を積んだわけでは全くないけれど、互いのことをよく知り、共通の体験を通してチームの一体感を高め、組織愛が育まれたのは間違いありません。「このチームのために勝ちたい」という気持なしでは、どれだけ厳しい練習をしていても勝てるはずがないという当たり前の真理に気付かされました。

楽しかった思い出は成人を祝ってもらったこと、夜な夜な五反田に繰り出したこと、恭平先輩がアナーキーにしか見えなくて爆笑したこと、凱一先輩、謙太先輩とコンビニに行きまくったこと、品川コリー邸で新年会をしたこと、蓮太郎先輩と泣きながら若竹で酒とお好み焼きを交互に食べ続け記憶が吹き飛んだこと、陸雄先輩とかがみさんに行ったこと、ゲリラでふみの会に呼んでもらったこと、世界一尊敬する南雲先輩を家まで逃したこと、大志先輩とあや先輩と渋谷の鳥貴族で飲んだことなどなど挙げればキリがありません。お世話になりすぎました。

 

4年生

本当にあっという間でした。主将を任せて頂いて、チーム井口のキックオフミーティングをしたことが昨日のようです。年が明けて慶甲戦に始まり、大一番の東京都学生、全日本学生、戸狩合宿、都学個人、全日本学生、尼崎、そして最難関の早慶戦。これまでチームとして立てた目標は全て達成してきました。主将になったばかりの2025年1月、後藤先輩と一緒に飲ませて頂いた時に「チームが勝てば主将の手柄、負ければ全て主将の責任、手段は問われていない。」というアドバイスを貰いました。この言葉を聞いた時、求められていることは非常にシンプルだと気づきました。1部リーグに上がり、全日本学生、尼崎に出場して2年前の結果を超える、そして早慶戦で勝つ。全国大会で結果を出せる選手も重量級の人数も揃っていない我々にとってのこの目標は高い壁であり決して簡単ではありません。個々の力を足し算にしていては絶対に勝てない、それだけは明確でした。それでも足し算をかけ算にできたら勝機はあるし、スポーツ推薦がない中でこの先もきっと難航し続けるリクルーティングの結果に依存しない「慶應らしい勝利の方程式」を実現することが僕の中での野望になりました。

足し算をかけ算にするにはいろいろ必要ですが結局1番大切なのは「組織愛」です。チームに属する全員がチームのために戦えるかどうかが全てです。人間、試合に限らず勝利すれば嬉しいものです。脳がドーパミンでいっぱいになります。強いチームならそれだけで好きになれます。しかし少しでも勝てなくなった時、その組織の繋がりは一瞬で崩壊し破綻します。そして皮肉なことに常に満足いく結果を出せるチームというのは日本中どこを見ても存在しません。他者から見ればどんなに一流選手が揃っていても戦っている本人達が満足する結果を永久的に手に入れるのは不可能です。今年の全日本学生柔道優勝大会の波乱を見れば分かります。「勝てるから好き」、ではなく、「好きだから勝てる」という本質を体現できれば結果が出ない時も、勢いに乗っている時も強靭な「繋がり」で突き進んでいけるでしょう。しかし、よくよく考えてみれば「好きだから勝てる」を最も体現しているのは紛れもなく慶應義塾體育會柔道部そのものです。今年で創部148年目、日本最古の運動部、脈々とつながる伝統は、卒業された先輩方がこの組織を愛し続けているからこそ「148年の繁栄」を成し遂げています。明治から令和まで大波乱の時代を強固なつながりで生き抜き、こうして今も活動していること、その一端を担えたことを誇りに思います。

 

 

と、こんな具合に4年間をざっと振り返りました。もうこの時点でワード3枚にびっしりです。もう少し続くので皆様適宜トイレ休憩に行ってください。ここからはお世話になった方々への謝辞を述べさせて頂きたいです。

 

家族へ

ここまで何不自由なく学校に通わせ、好きなことをさせてもらって本当にありがとうございます。柔道と進路のことで大揉めしたりと、小さい時から本当に手のかかる息子ですみません。早慶戦が終わったらちゃんと卒業して社会人になります。あと少しだけドラ息子させて下さい。

 

敬愛塾の皆様

6歳の頃から義和先生を始め多くの先生、先輩方にお世話になりました。敬愛塾は僕のもうひとつの実家だと思っています(実家の隣が道場だしね)。柔道の楽しさ、厳しさ、全てを学びました。毎晩みんなで稽古して過ごした日々は一生の宝物です。敬愛塾に入っていなかったら僕はここまで来られなかったです。試合が終わったらまた義和先生のお墓参りに行って飲みましょう。そろそろみんなに会いたいです。

 

春日柔道クラブの皆様

中学時代、大変お世話になりました。向井先生や千品先生、同期先輩後輩の皆さんのおかげで初めて柔道で勝つことに本気になれました。特に同期のみんなには高校に入ってからもたくさんお世話になりました。春日での出会いがなかったら今僕は慶應で柔道はしていないと断言できます。春日同期の入道と大学でまた同期になれて、松前の池田尚悟が早稲田にいる、城南地区、エモすぎますね。ホームの講道館で一花咲かせます。

 

暁星高校の皆様

柔道だけでなく未熟な僕を何度も指導してくださった先生方には頭が上がりません。大阪の試合後に授業を休んでユニバに行って怒られたり、柔道のために内部進学を断ろうとして大揉めしたり、本当に散々迷惑をかけました。勉強も部活も超優秀な同級生に囲まれたから柔道を続けることができました。暁星最高です。

 

 

應義塾體育會柔道部の先輩方

主将になってから、この組織がいかに先輩方に支えられているか理解できました。僕たちがこうして早慶戦に出られるのも先輩方がこの組織を愛し、支援して下さっている他ありません。勝って結果を出すことが最大の恩返しです。死に物狂いで戦います。

 

 

チーム井口のみんな

早慶戦不動の先鋒ハセ、世界一のナイスガイ入道、初心者は詐欺すぎるトモ、筋肉系潔癖症の勇人、真面目ぶり坊主の楓、異国最古の体育会に溶け込みまくるどんみん、地元(福井県坂井市)じゃ負け知らずのムネ、サザン師匠あつき、立ち技繊細系100kg超級りくと、部屋っ子ゼミっ子の本吉、自己犠牲お笑い芸人の林、大ふざけ大男大分山中、30度超えでも絶対長ズボン康志郎、10代痛風男大志郎、食事途中離脱睡眠の和志、カーテン閉める時毎回「シュッ」って言うマサ、横顔が吉沢亮の城武、懸垂しろ入住、変態トレーニージェイク、弁当持参の倹約家たけし、色男?全国プレイヤー優誠、切れ味抜群仏式足払いマテオ、ボスマネージャーみりる、みんなのアイドル花、喋ったら1番おもろい芽吹、岐阜のギャンブラー美緒、柔道部非公式マスコットすみれ、インスタいいねゲッター桜子、歩くシラバス愛理。

みんな1年間本当にありがとございました。こんなにそれぞれ特徴がある柔道部、キャラ濃いな。4年、3年、3年、3年という全く新しい幹部構成で、僕の至らない点でみんなに迷惑をかけたことも多々あったと思います。それでも今年のチームの為に全員が粉骨砕身してくれたからこそここまで走り抜けられました。試合に出ようが出まいが柔道経験者であろうがなかろうがみんなは立派な柔道部員です。考えることをやめず常に前向きでいて下さい。このチームで1部に返り咲けたこと、全国の舞台で2度(優誠は3度)戦えたこと本当に本当に嬉しく思います。普段みんなのことをイジりがちな僕ですが頼りになる可愛い後輩です。何かあったらいつでも相談して下さい。そして、一緒に幹部を務めてくれた陸斗、あつき、ムネ、本当にありがとう。ひとつ下ながら柔道にマネジメントに頼れすぎる後輩達です。来年はもっと良い結果を出せると確信しています。がんばれチーム宗廣。そして同期のみんな。いつもワガママや悩みを聞いてくれて、部の士気を上げてくれて、このチームの笑顔の源流でいてくれて本当にありがとう。感謝しても仕切れません。恥ずかしいのでここだけにしておきますが大好きです。

 

朝飛先生

入部してすぐに僕が小さい時に敬愛塾に来てくださり、鈴木先生の奥さんに「大ちゃん、大ちゃん」と呼ばれていたあの朝飛先生でいらっしゃるのを思い出しました。先生の稽古中の指導、前向きな声がけ、試合中の鼓舞、魔法なのかと思うほどに体に力が湧いてきます。本当にお世話になりました。早慶戦もよろしくお願いします。

 

フラマン先生

フラマン先生は少年のような遊び心と、圧倒的なパッションを持つ本当に魅力的な先生です。稽古中の奇声や悪いことを企んでは共有してくる反面柔道では経験位裏打ちされた的確な指導に何度も助けて頂きました。本当にありがとうございました。

 

笹野監督

初めて監督に会ったのは高二の冬でした。物腰が柔らかくおっきな人という印象を受け、そのまま受験説明を師範室で聞いたのを今でもよく覚えています。監督のセールス力とチャーミングな笑顔に惚れ込み、その場で受験を決意しました。僕も監督に口説かれ入部した身ですがAOを担当してみて監督が本当に柔道部の為に身を粉にして、休みを返上して全国を飛び回り部員にはいつも笑顔を見せ、仕事までこなすところ、本当にスーパーマンだと思います。部員が今日も練習に打ち込めるのは間違いなく監督のおかげです。本当にお世話になりました。OBになったら少しでも監督の支えになれるように精進します。

 

以上で僕の3年半の部員日誌を終わります。ここには書き切れませんが、関わって下さった全ての人に感謝申し上げます。慶應柔道部、大好き!と叫びたいですが僕たちには最大にして最難関の早慶戦が残されています。勝って監督を胴上げしてみましょう。その時に取っておきます。明日はついに柔道人生を締めくくる日です。後悔のないよう全力を出し切ります。応援の程よろしくお願いします。

勝つぞ、慶應。

慶應義塾體育會柔道部 主将

井口虎太郎

 

お わ り