こんばんは、最近ショッキングな出来事が続き疲弊している井口です。本日は道場よりお送りします。私の部員日誌も残り3回になってしまいまして、引退の2文字が段々と現実味を帯びてきている状況に悲しい気持ちでいっぱいです。残り3回に因んで今回は後輩のみんなに伝えたい3つのことを僭越ながら書かせて頂きました。では、「言いたいことは3つ。」
その1、今を生きろ
塾柔道部員のみんなは、柔道、受験など様々な苦難を乗り越えて試合や試験などその一瞬に最大のパフォーマンスを発揮する為に高校卒業までの大半の生活を費やしてきたはずです。
慶應義塾大学に入学する条件として、それだけの努力ができることを試験で証明する為に受験というシステムが設けられていますよね。また、塾高柔道部や強豪校出身の部員は方法こそ違えど全力で柔道の研鑽を積んできたことが認められたからこそ現在塾柔道部に所属していると思います。
振り返ってみると、高校生までは「未来の為に今頑張る」という、どこか常に切羽詰まった時間を過ごすシステムになっていて、そこでの努力や成果は絶対的に正しい物差しとして我々に刻まれています。
しかし大学はどうでしょうか。大学生になった瞬間、高校生までの練習量や勉強量は強制されず、4年間という膨大に思える時間だけがそこに残ります。
私は皆さんにこの4年間という時間の中で「未来の為に今を犠牲にして頑張る」という価値観とは違う別の軸を持ち、人生の裾の尾を広げて欲しいと思います。柔道だけを直向きに頑張ることを否定してるわけではありません。当然、体育会である以上柔道の稽古に全力を注ぎ、勝利を貪欲に追い求めることは果たすべき義務です。義務を果たした上でぜひ自分の心が赴く方へ進んでみてください。刹那的に生きてみて下さい(留年はするな)。例えばゼミで好きな勉強だけに没頭してみる、好きな女の子とデートに行ってみる、サーフィンをしてみる、面白そうなアルバイトをしてみるなどなど何でもいいのです。とにかく今自分が興味があることにフォーカスして全力で楽しんでください。その経験を通じて多くの人と接点を持ってください。飲み会に呼ばれたら行ってみてください。結果として柔道以外の私生活が堕落するかもしれない。けれど、そんな自分を受け入れてあげられる時間は高校生までと、社会に出てからは有りません。多くの経験、多くの人との出会いが「自分も知らない新しい自分」を見つけてくれるはずです。
GTOの鬼塚先生セリフに「今日一日を大切に生きた積み重ねが未来だ」というものがあります。自分が本当に大切にしたいもの、価値観を迷って迷って探すことこそ大学生に与えられた特権であり、それを行使し切るには4年という時間はあまりにも短い。柔道を毎日やっているから、自分は体育会だから、と偉そうにふんぞり返って何も行動しないままでは、つまらない人間に成り下がりせっかくの価値が輝きません。ぜひ塾柔道部の後輩のみんなには大学生活を通して既に持っている価値観と比較しながら多くのことを経験し受け入れ、多角的で豊かな人になって欲しいです。
その2、思考を止めるな
先ほど、体育会だからといって偉そうにふんぞり返るなと言いました。就職活動をしてみると分かりますが、会社は別に柔道が強い人を求めているわけではありません。組織で活躍して社会に貢献する為に会社に入ります。組織での予行練習が出来ているから体育会は重宝されるのです。中でも塾柔道部は練習メニューから人材確保から試合企画から全て学生主体で行なっています。それは、すごく価値のあることです。しかし、自分たちで考えているからこそ、柔道部に所属しているだけで日々の稽古に加え、仕事を振られたり、組織のために動いたりする機会が自動的に降ってきます。降ってくるものに対し脳死で対応し続けるのは思考が止まっていると言えますよね。世の中を広くみると、大きな目標から逆算して、我々が脳死で行なっている課題を自ら創造している奴らがわんさかいます。言われたことを忠実に再現することしか出来ない人間の市場価値が大幅に下がる中で、主体的に課題設定をするクリエイティビティーに溢れた人達と、この先戦わなければいけない状況を考えると、思考停止にハマりやすい我々が真価を発揮するには、いかなる時も主体的に考えて生きる必要があります。
思考放棄は死と同値。自分の受験経験を活かして人材確保をしたり、自分の個人的な人脈を活かして広報活動をしたりなどなど、柔道の実力に限らず活躍の場を見つける努力を全員が怠らなければ、塾柔道部は各々の持つ個性が豊かな分組織として大きく強くなります。思考を止めないことが柔道部を強くし、社会における市場価値を高めると思います。
その3、前向き直向き
柔道をやっているとどうにも全く歯が立たない相手に蹂躙されることがよくあります。その度に自分の弱さを突きつけられ、時には嫌になってしまうこともあると思います。
ここまでこんなに偉そうなことをつらつら書いてきた僕も1年生の頃は練習では誰も投げられず、試合にも出られず毎日ボロ雑巾のように投げられていました。でも、今だから言いますが実は僕はそれがとても嬉しかったのです。なぜなら、自分がちゃんと柔道に取り組める環境に身を置けている実感が、先輩たちに投げられる度に沸いたからです。高校に入った時、柔道部が無くなり挫折した経験があったからこそ、毎日練習があって、仲間がいて、応援してくださる方がいる素晴らしさ、その恵まれた環境に身を置くために努力を惜しまなかった高校生の時の自分などなど、当時は気持ち悪がられるかなと思い顔には出さないようにしてましたが、実は色々なものに感謝した1年生でした。
全く活躍できないと人間はやっぱり嫌になります。自分の存在価値を疑わざるを得ない状況に胸が痛くなります。「慶應大学だし、試合で勝てなくても就職できる」と言う言い訳を立てたくなります。でも、僕たちは体育会。将来がどうとか勝負にそんなことは関係ない、という普遍的な事実の解釈は変え難い。むしろ他の大学は進路を切り開くために死ぬ気で稽古してます。その事実を学んで受け入れた上で他大学に勝つために全力を尽くすことに価値があります。ある程度思い通りにキャリア形成ができる慶應だからこそ、「慶應に入ったらもう安泰」、そう思ってる人が9割だからこそ、全て捨てて裸一貫で勝負することに価値があります。今の状況が辛いと思うならそれは成長しようとしてる証拠です。それが辛抱から充実に変わるまで走り続けるしかないので、常に前を向いて欲しいです。
長々と書いてしまいましたが、以上が僕の伝えたい3つのことです。僕の主観なので強要はしませんが、困った時に思い出してくれたら役に立ったり立たなかったりすると思います。残り2ヶ月を本日切りましたがチーム井口は爆速で、全力で、後悔ないよう駆け抜けます。引き続き変わらぬ応援の程よろしくお願いします。
お わ り