こんばんは。4年の篠原です。

最後の日誌となりました。
とてもあっという間という言葉では片付けてならない大学4年間、塾高時代を含めての慶應義塾生活7年間でした。

「青春」にはその人によって様々な意味、捉え方、充実のさせ方があると思いますが、私にとって塾柔道部を中心に活動したこの7年間は、何よりもかけがえのなく、生き甲斐を感じ、一生懸命に日々思考し、行動し、この上なく充実した幸せに満ちた青春でありました。

長くなるかもしれませんが、簡潔に学生時代の心情を振り返らせてください。

1年次、多くの部員、厚い選手層に自分は学生生活4年間で一度もレギュラーどころか20人の早慶戦選手にも入れないのではないかと不安を感じた日々、私の塾高時代の成績、力量をご存知の方はこれがなんの謙遜でもなく本音で言っていることを理解していただけると思います。

ただ、心は全く折れていませんでした。
これは大学柔道部、ひいては学生主体のチーム運営において最大の弱点だと思いますが、当時の柔道部はモチベーションのある人間と無い人間の差が顕著でした。
一生懸命やっても褒められることはなく、また逆に一生懸命やらなくても怒られることはない、モチベーションを保つのは難しい環境です。
しかし、私自身は恩師の塾高部長鏑木先生に受けた教え、精神、信念を無下にすることは出来ない、私に期待して東京に送り出してくれている両親を裏切ることは出来ない、そして何よりこの大好きで尊敬のできる仲間が沢山いる塾柔道部を愛してやまないといういくつもの感情がモチベーションとしてありました。

試合に出られなくても練習の中で人一倍声を出す、乱取りを簡単に休まない、存在感ぐらいは出せるだろう、みんなが嫌がる出稽古や練習試合に自分は手を挙げて行ってやろう、アピール出来るところでとことんしてやろうと日々もがいていました。

また、SFCや三田の学生はどうしても平日の朝練や稽古に参加できない日が出てきます。自分より練習していない人間に負けてたまるか!という感情が芽生えます。
ましてや、たまにしか練習に参加出来ない学生が乱取りをサボっている、大した怪我でもないのにトレーニング組に加わっている、それがレギュラーの選手だったらどうでしょう。自分の力量が低くても、努力を続け、闘志を燃やし続けていれば付け入る隙はいくらでもあります。
強い組織を作るためにはマイナスの要因である彼らが、私にとっては自信とモチベーションに繋がっていました。

もちろん、部内全体が上記のような環境であった訳ではありません。極々一部の話です。ただ、その極々一部の綻びが私にとっては逆に活力となり、闘争心を掻き立てる材料となりました。
そんなこんなで1年の早慶戦メンバーに部内戦を経て食い込むことが出来たのは、半年間もがいた結果としては大きな収穫でした。

そして2年に上がり、今度は1つ下の学年にAO入試で沢山の全国に名の知れた学生が入って来ました。塾高から上がってくる学生もかなり強い後輩たちで、チームにとっては大いに嬉しいことですが、私にとってはまたまた不安な日々となりました。

そんな中で向かえた春のレギュラー選考、ギリギリの12番目で勝ち抜くことが出来たのです。これは大学生活4年間の中で個人的に一番嬉しかった出来事だったと思います。1年間自分なりに考え努力した結果が報われた瞬間でした。
普段生活費や必需品の連絡ぐらいしかしない両親に、この時ばかりは自分から電話をしました。恐らく両親は私の部内の立ち位置や柔道の力量を理解していなかったとは思いますが(何の報告も連絡もしない私が悪いのですが…)興奮状態の私と一緒に大いに喜んでくれたことを今でも鮮明に覚えております。

しかし、2年間の早慶戦の敗北や、チームの状況を省みた時、先述した弱みに対して何の行動も起こさなくて良いのか、このまま自分だけがチームの弱みを突いて部内で少し勝てるようになって対外試合では結果を残せない、そんなチームで良いのだろうか、チーム全体で強くならなければ、全日本学生で勝ち抜くこと、宿敵早稲田に勝つことが出来なければ本当の意味で幸福を感じることは出来ない、大好きな組織に対して貢献することは出来ないと考えるようになりました。

AO入試でせっかく強い学生が入ってもその学生に高いモチベーションが無ければチームの雰囲気を悪くするだけで終わってしまいます。
一般入試や指定校入試、内部から上がってきた叩き上げ組がモチベーションを高く保ってレギュラー組を常に脅かしていなければチームのレベルはいつまで経っても上がりません。

怪我や実力が不十分で乱取りを最後までやりきれなくても周りで練習を盛り上げることは出来るでしょう。
マネージャーさんでも、プレーヤーが悩んでいるときに軽く声をかけて貰えるのは選手にとっては大きな救いになるでしょう。

レギュラーの選手でも、いくら弱い選手でも、大怪我を抱えていても、柔道をしないマネージャーさんでも、この部に在籍している以上、それぞれに役割があり、必要のない部員など一人たりともいないのです。

ではどうすれば常にモチベーションを高く保てるのか、それは各人がこの組織を思う気持ちの強さだと思います。もちろん、個人戦で日本一を目指す、目指せるレベルにある学生はそこに目標を置き、常に高いモチベーションを保てると思います。しかし、全員がそうではありません。
チームのことを思う気持ちがあるのならば、練習をサボる、士気の下がる発言をする、といったマイナスの要素は少なくとも出てくることはなく、活気ある稽古の実現、こんなメニューはどうだろうかといった提案など、プラスの意見交換も出来ると思います。これが実現出来るのが学生主体のチーム運営の大きな強みだと思うのです。

ではどうすれば皆が部を好きになってくれるのか、それは先輩方にしていただいたように休日にご飯を一緒に食べに行くのもそうかもしれない、練習中やそれ以外の場面でのちょっとしたコミュニケーションもそうかもしれない、とにかく部員全員と強い信頼関係を結び、部活の時間が苦しくも楽しい時間だと思ってもらえるような行動が必要だと感じました。

上級生になってからは全力でこの課題に向き合い、柔道の稽古と共に一生懸命取り組んでまいりました。

 

我々柔道部員は、学生生活を充実させるためにこれ以上ない最高の環境を先輩方、学校、関係者の皆様に整えていただいています。

高額なトレーニング器具や備品を先輩方に購入して頂いたり、(早慶戦選手は現在毎日パワーマックスを漕ぎ、心肺機能の確かな向上を感じています。)
寮に食事をつけていただいたことで学生の病気は減り、体は強く大きくなり、
学生が何か苦労や悩みを感じているときにいつも助けてくださる方々がいます。

環境は整っているのです。あとは学生が本気で組織を強く成長させるために思考、行動するのみです。
ただ、チームのことを考え実行することは非常に体力、精神力のいることです。これをやりきるにはやはり一人一人のチームへの誇りと愛情が必要になります。

そしてもう1つ、この先の話をさせてください。私たち塾柔道部は言うまでもなく、学生大会上位進出、対早稲田戦の勝利を目標としています。ただこれは学生時代の目標であり、この組織の意義はなんだろうかと考えました。

我々は強くあらねばならない。強くなるために沢山頭と体を使い、自身と組織は共に成長していく、そしてこの素晴らしい経験を今度は社会に出て還元する必要があります。

先輩方がまさに過去も現在もそうであるように、ここでの苦労、喜び、全ての充実した経験を活かし、我々塾柔道部を出た学生が、今後我が国を、社会を背負って立つ人間にならなけらばならないという使命があると感じております。

それだけの責任を、誇りをもって部員全員が四年間活動しきることが出来れば、自ずと柔道の結果、強い組織力も実現出来るのだと思います。

私はまもなく塾柔道部を引退し、また新たなステージへと旅立ちます。しかし、これまでも、これからも、私自身にこれ以上ない仲間と経験と成長を与えてくれた慶應義塾体育会柔道部への深い愛は変わりません。

お世話になった全ての皆様に大いなる感謝を、そしてこれは全くもって今生の別れではありません。皆様とお会いできる機会があれば喜んで向かわせていただきたい、後輩たちに微力でも支援、応援が出来るのであれば喜んでさせていただきたいと考えております。

これから5年、10年、何10年経ってもこの塾柔道部が人間としての成長の機会を与えてくれる組織であることを、心から応援したいと思えるチームであり続けることを、切に願っております。

長くなりました。とにかく目の前の最後の早慶戦、大一番です。今年はチームの雰囲気が物凄く良いと思います。学生の出来る最大の恩返し、結果で応えることが出来るよう、最後までチームに尽くす所存でございます。

最後にもう一言感謝を伝えさせてください。
皆様本当にありがとうございました。
また近いうちにお会いしましょう。その日まで、ごきげんよう。

おわり。