平素より大変お世話になっております。
主務の小野佑眞です。

最近は涼しい日が多く、過ごしやすい天気が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。六徳の民は新たに2名の入寮者(2年澤田・1年井口)を迎え、合計13名と着々とその勢力を拡大しつつあります。かつての一大勢力の復活は目前です。

この部員日誌は、戸狩合宿の帰りのバスで書き始めています。本当は寝るつもりだったのですが、隣の森井がうるさくて眠れず、ラストガリを終えた今、7年間の懐古をしています。合宿に関する自分語りは前回の部員日誌でたらふくいたしましたので、今回は割愛させていただきます。

人生最後の戸狩合宿で、印象に残っている部員がいます。進士凱一(法政2)です。部員日誌で特定の個人のことを記すのはあまり好きではないのですが、少しだけ述べさせていただこうと思います。

皆さん御存知の通り、進士はオーストラリア帰りの帰国子女で、日本語より英語のほうが得意、学内外において勉強にも励んでいる部員です。大学から柔道を始めた彼は、今までとは全く異なる組織・文化・規範の下で、日々自分よりも強い部員と稽古をしています。

そんな彼にとって初めての合宿、練習相手は日体大をはじめとする強豪校や高校生、稽古は二部練、その厳しさは想像に易いと思います。現に、彼の手の皮は剥がれ、投げられて肩を痛め、90kg級の南雲をオンブしてゲレンデを登るなど、傍で見ていても、しんどいだろうな、と何回も思いました。しかし、彼はめげずに食らいつき、1日1日を乗り越えていました。そしてある日、私は彼が日体大の選手を投げたのを見ました。相手が抜いていたからか、二軍だからか、そんなことは関係ないです。日々の苦しい稽古と数多の怪我を乗り越えたその「一本」の重みは、(本人がどう思っているかは別にして)私にはとても重く、努力の賜物とさえ思えました。

 

大きくなってから柔道を始めることは、小さい頃から柔道を始めることと比べ、本当にタフで辛い、いい意味でも悪い意味でも刺激の多い経験だと思います。しかも、大学レベルとなると、体の強度的にも怪我が多くなり、みんなが当たり前のことが当たり前にできないこともあり、また、周りは強豪選手ばかりで、自身の気持ちや辛さ、柔道の悩みに共感してくれる人は少なく、何かと心寂しいこともあると思います。そんな中、必死に食らいついて稽古をし、何より、(何度も辞めようと思いながらも)塾柔道部で柔道をするという決断をしてくれた彼に感謝し、誇りにさえ思います。「勝利」という絶対目標を掲げる体育会という組織の中で、柔道の技術だけでなく、柔道に向き合う「姿勢」を、「初心者からベテランまで」、幅広く学ぶことができるのは、やはり、慶應義塾體育會柔道部の本当に良いところだと思います。

 

なぜ、私が進士の話を出したのかと言うと、「自信をつけることの大切さ」を感じたためです。

 

進士にとって合宿でのたった一本の投げが自信になったかはわかりませんが、私はその価値は大きいと思います。(かくいう私は、高校3年間練習していた背負投が初めて試合でかかったのは大学1年生の頃で、その一本はとても自信になりました。。。)また、戸狩合宿の全てをやりきった事それ自体も、初めての合宿であるならば尚更自信になると思います。目の前の1つ1つの乱取りやトレーニングに向き合い、コツコツと積み重ねていって初めて自信というものはついてくるとおもいます。

そして、「自信」というのは、個人だけでなくチームにも適応されうる概念なのではないか、と最近になって思うようになりました。チームの自信ってなんかダサいので、「チームの矜持」とでも言い換えてみます。これは、絶対に勝たなければならない戦いの際、例え実力差があったとしても、「勝てる。」と、「チーム全員」が思い、奮い立ち、勝利するために必要なものだと思います。

半ば虚栄心に似たこの「矜持」ではありますが、これは戦いにおいても、塾柔道部を卒業するにあたっても、ものすごく大切で、塾柔道部での4年間を、2倍にも3倍にも濃密にさせてくれるものだと思います。なぜならこれは、我々が今後生きていくに当たり、大切なアイデンティティであり礎であるからです。何を以て完成形とするかは定かではありませんが、体育会として、塾柔道部として、これを醸成することはとても大切なことだと思います。

 

では、この「チームの矜持」はどのように培うのか。私は進士の例と同じだと思います。日々、チームのことを考え、稽古のことを考え、部員のことを考え、そして自分の動きを考える。主体性という曖昧な言葉はあまり好きではありませんが、各々が自身の役割・立場を考えながら行動し、その気持ちや意見を共有ないし察知する。
そしてそれらが段々と同じ方向を向き、一つになって初めて「チームの矜持」が醸成されていくのだと思います。

9月9日〜11日に行われた「寮合宿」には、(実は)このような目的がありました。(勿論、戸狩合宿も同様だと思っています。)部員全員で六徳舎に泊まり、同じ釜の飯を食らい、稽古をし、掃除をし、登山をし、BBQをする。かなりインテンシブに柔道部にコミットした生活を仲間全員とともに行うことで、楽しみながらも、塾柔道部人としての自覚・マインドを感じ、身につける。特に、次期最上級生の3年生と女子に企画立案をお願いし、全てのオペレーションをしてもらった理由はこれに尽きます。本当にありがとうございました。

 

少し書きすぎてしまいました。
部員日誌も残すところあと1回です。そして、早慶戦まであと2ヶ月を切りました。

 

その時、私は、チーム杉村は、どのような「矜持」を持っているのでしょうか。

 

とにかく頑張ります。頑張ろう。

 

以上